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「のしろ(能代)日本語学習会」 活動日記



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フィリピンから来たY君

2011.01.25(06:23) 121

もうすぐ高校入試のY君・・・母親と一緒に火曜日の教室へ来て2年目になる。

Y君と最初に会ったのは5歳の時だった。来日2日目に母親に連れられてやって来た・モチロン日本語なんて一言も話せない・・でも、好奇心一杯の元気なハキハキした口調で「僕に何でも教えて下さい」と言う男の子だった。
5ヶ月間教室で学び、ひらがなが書けるようになり、読めるようになってきた時、来年から小学校に行かせる手続きをしたので保育所に入れたい・・教室には来られなくなりますと日本人継父が言った。

日本語指導をしないと学校の勉強にはついていけないので、本人が困ることになると言ったとき・・地元の方言もぺらぺらで大人の言うことは全て理解でき、子供たちとも遊んでいますから大丈夫です・・そう言ったのは、彼の住む町の教育委員会担当者だった・・・それ以来、日本語教室には来られなくなったY君。
(たった半年で、日本語が理解できたら英語をこんなに学んでも話せない日本人はなぜ?子供は環境があれば、異文化の言語も簡単だと思う・・そんな無理解が子供達を殺してしまう)

その彼が、中学1年で日本語教室へ戻って来たとき・・・彼の眼は死んでいた
あんなに真っ直ぐに顔を上げ人と話していた彼の顔は・・疑心暗鬼の固まりになっていた。キラキラ輝いていた眼は遙か遠くを見つめ、生きていくことに疲れたとでも言うように泳いでいた

教室へ連れてきた父親が激白・・・町の小学校で予算を取り、素晴らしい定年退職校長3名に日本語指導を頼んでくれたが、こいつは成績も悪く学校での言葉遣いも態度も悪い・・予算を付けてくれた役所に申し訳なくてフィリピンに帰そうと思ったが、タガログ語も忘れてしまっている・・・学校へは休まずに行くが(義務教育)進学する気もないし働くところだって無い・・・こんな子をどうしたらいいだろうか・・・・

「君は外国人だと言うことに甘えている・・日本では通用しない」と書かれていた通信簿を、父親は持ってきて見せてくれた。

「自分は、頭も悪いし生きていく価値のない人間なんです・・死ねばいいのは分かるけど、死ぬ勇気もない・・雪の中で寝ていたら死ねるかな~・・言葉遣いもダメだって言うけど・・自分の何が悪いんでしょうか」


私の目を探るように彼が聞いてきた・・私を覚えている?と聞くと「モチロン、僕に最初に日本語を教えてくれた先生だもの・・どうして僕はこの教室に来られなくなったんですか・・」

目の前のうっすらヒゲが生えてきた中学一年生の男の子・・まだまだ幼いのに、何か生意気そうな雰囲気が漂うのはなぜだろう・・そうだ!!・・何となく校長先生の雰囲気を醸し出す・・3人の日本語指導者は定年退職校長だったんだ。

日本語指導者は、鏡と同じだといつもボランテイアには言い聞かせているが・・Y君はその見本のような子どもになっていた。思わず笑ってしまった。「先生、何が可笑しいんですか?」と聞くY君に、もう一度最初から勉強しよう・・何年生から分からないのか、もう一度確かめよう・・進学まで2年あるから、教室で勉強してみない?
彼を別の鏡に映してみたいと思った・・きっと変えられる・・素直だからこそ彼はミニ校長になってしまったのだから・・


あれから2年・・もうすぐ高校入試だ・・「受験することにしました」と、教師に伝えるのには勇気が要ったと思う。ほとんど見捨てられていた環境の中で、普通の子供として立ち上がるのは辛いことが多い。
しかし、人を呪ったり恨んだりしていても自分の得にはならない・・挫折しそうになりながらも、教室は一度も休まずに来る・・モチロン学校にも行っている。

時々・・僕は何事も最後まで続かない人間だと言われてきましたから、僕が入試で落ちたら、先生の経歴に傷が付くんですよね・・父に言われました・・ そうしたら申し訳ないですと・・言うY君・・

笑い飛ばしてやった・「君が落ちたくらいで私の経歴は傷つかない・元々地位も名誉もない私の、どこが傷つくの・・・落ちることより受けるために勉強することに意味がある・自分のための勉強でないなら辞めたらいい
地位や名誉を守るために生きているなら、私が一番つまらないことをしている人間だと言うことになるでしょ
君を手伝っても地位も名誉も得られないんだよ」・・

「そうですね・・そう言うことになりますね」・オイオイY君、そう簡単に私の行動を決めつけないでよ・・二人で笑ってしまった。

君が大人になって自立して生きていくことが私の望み・・そのために今、君ができるのは勉強すること・・仕事を見つけるためにも、資格を得るためにも高校には行って欲しい・・自分自身の力で・・

君を、本気で見つめている人たちがたくさん居るでしょう・・誰も損だとか得だとか思っていない・・まして地位や名誉など誰も考えていない・・それがこの教室だよ・・
私は君を信じてる・・5歳の時の君は、真っ直ぐな眼をして相手を見つめていた・・その時の君を忘れていないから、君をこの教室に戻したんだよ・・頑張れ!!

斜に構える姿勢が、この頃真っ直ぐに向くようになり、子供らしい笑顔を見せる・・・・
君の押しつぶされそうな心を誰も理解してくれなかったんだね・・
日本語指導者は、子供達の一生を左右する人間なんだと・・改めて思った・・

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2011年01月25日
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